『爆弾』:サスペンスの極みを追求する一冊

取調室に、怪物がいる。

ぼさぼさの頭、よれたシャツ、どこにでもいそうな中年男。
だが、彼が口を開いた瞬間から、すべてが狂い始める。

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呉勝浩が解き放った、史上最厄介な男

2022年に講談社から刊行された『爆弾』は、ミステリー界を一気に席巻した作品だ。

『このミステリーがすごい!2023年版』国内篇1位。
『ミステリが読みたい!2023年版』国内篇1位。
W1位という快挙を成し遂げ、本屋大賞ノミネート、直木賞候補にも選ばれた。

数字だけ見れば、文句なしの”話題作”。
でも、この本の本当の恐ろしさは、そこじゃない。

スズキタゴサクというキャラクターが、
読んだあとも頭から消えてくれないことにある。

「十時に、秋葉原で爆発がある」

些細な傷害事件。
野方署に連行されてきたのは、自称・スズキタゴサク、49歳。

よれよれの見た目に、とぼけた口ぶり。
警察側は最初、まともに取り合わない。
たかが酔っ払いだ、と。

しかし男は、取調室で静かに告げる。
「十時に秋葉原で爆発がある」

直後、廃ビルが爆発する。

「ここからあと三度。次は一時間後」

物語はほぼ一日のリアルタイムで進む。
警視庁特殊犯係の類家刑事がスズキから情報を引き出そうと知能戦を仕掛ける取調室と、都内各地を走り回る爆弾捜索班。
二つの戦場が同時進行し、東京全体が恐怖と悪意に飲み込まれていく。

スズキは霊感があると主張し、のらりくらりとかわしながら、謎めいたクイズを繰り出す。
怒鳴っても、詰めても、崩れない。
むしろ、追い詰めているのはどちらなのか、だんだんわからなくなってくる。

正義とは何か。
悪とは誰か。
そのどちらとも断言できないまま、ページをめくる手が止まらなくなる。

こんな人に刺さる

– 心理戦・頭脳戦の読み応えが好きな人
– 「一気読み」という体験をしばらくしていない人
– 強烈な悪役キャラクターに惹かれる人
– 警察小説・捜査ものが好きだけど、少し違うものを求めている人
– 社会や正義について、フィクションを通じて考えたい人
– 映画やドラマより先に原作で体験したい人
– 「あのキャラクターが忘れられない」という読後感を求めている人

あわせて読みたい関連作

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼
「霊感がある」と主張する人物をめぐる心理戦という構図に共鳴する部分がある。騙される快感を求めるなら、この一冊も手元に置いておきたい。

『法廷占拠 爆弾2』呉勝浩
『爆弾』の続編として2024年7月に刊行。スズキタゴサクの物語はここで新たな局面を迎える。あの男が、今度は法廷に現れる。

あの取調室は、まだ終わっていない

2025年10月、映画が公開。
佐藤二朗がスズキタゴサクを演じ、山田裕貴が類家刑事を演じる。
コミカライズも始まり、続編小説もある。

それだけこの物語が、多くの人の手を離れないということだ。

原作を読んだ人は、映画を観たとき何を感じるだろう。
まだ読んでいない人は、どのページで息を呑むだろう。

スズキタゴサクは、きっと待っている。

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