山口未桜『禁忌の子』:ネタバレなし、鮎川哲也賞満場一致の受賞作

2024年、ミステリー界隈がざわついた一冊がある。

第34回鮎川哲也賞を満場一致で受賞。週刊文春ミステリーベスト10・国内部門3位。そして2025年本屋大賞4位。
デビュー作でこの評価は、尋常じゃない。しかも著者の山口未桜は、現役の医師だ。

読み終えた翌朝、電車の中で最初の数ページを読み返していた。あのタイトルの意味が、最初に読んだときとはまるで違う重さで、そこにあった。

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山口未桜という作家が、この小説で仕掛けたもの

『禁忌の子』は、静かに始まる。救急医の武田のもとに搬送されてきた溺死体——身元不明の「キュウキュウ十二」——は、武田自身と瓜二つだった。顔だけじゃない。他人には絶対に知られるはずのない、体の特徴までそっくりだった。
この一行で、手が止まる。
どんでん返しがある、とだけ言っておく。「叙述トリック」や「意外な犯人」という言葉で片付けられるものじゃない。もっと根っこのところを、ごっそりひっくり返される。読み終えたあと、最初の数ページを読み返したくなる。実際に読み返した。
——ああ、そういうことだったのか。
その一言が、静かに、重く、落ちてくる。

物語のなかに引きずり込まれるまで

死体は誰なのか。なぜ武田と瓜二つなのか。そして、武田自身のルーツとは——。
旧友で医師の城崎とともに謎を追い始めた武田が、やがて辿り着くのは、生殖医療をめぐる秘密と、生命倫理の深い闇だ。鍵を握る人物にようやく接触しようとした瞬間、その人物が密室の中で死体となって発見される。謎が解けるどころか、さらに層を重ねていく。
「禁忌の子」とは、一体誰のことなのか。その答えは、最後まで読まないとわからない。そして、わかった瞬間、冒頭に戻りたくなる。
ネタバレはしない。何を書いても、この本の鋭さを削いでしまうから。

禁忌の子は、こんな人に刺さるかもしれない

– 読み終えたあとに「あれは何だったんだろう」と余韻を引きずりたい人
– どんでん返しを、気持ちよく騙されたいと思って求めている人
– 生命倫理・出生の秘密といった、リアルで重いテーマに引き込まれる人
– 心理描写が細かく、登場人物の内側を丁寧に読みたい人
– 湊かなえや、東野圭吾の「加害者・被害者の境界が曖昧な話」が好きな人

この作品との向き合い方

これは紙で読んでほしい。
この本は、途中で「あれ、あのシーンって……」と前に戻りたくなる瞬間が必ずある。紙のほうが、その行き来がスムーズで、読書体験として完結する。電子だと、その一瞬の「戻る」がわずかにもたつく。それだけで、テンポが変わってしまう。

『禁忌の子』が面白かった人におすすめの本

『告白』(湊かなえ)
語り手が変わるたびに、同じ出来事の見え方がまるで変わる。視点の操作で読者を揺さぶるという点で、『禁忌の子』と共鳴する部分がある。どちらを先に読んでも、面白い。

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『そして誰もいなくなった』(アガサ・クリスティ)
孤立した環境で、じわじわと真実が剥がれていく構造。古典だけど、今読んでも古くない。閉ざされた空間での緊張感という文脈で、『禁忌の子』を読んだあとに置いてみると、また違う読み方ができる。

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『禁忌の子』読んでよかった、しかも続編出てる

読み終えてから、「禁忌の子」というタイトルの意味をもう一度考えた。最初に見たときとは、まるで違う重さがそこにあった。これ以上のタイトルはない、とすら思った。

本作で探偵役を担った城崎響介を主役に据えたシリーズ第2弾『白魔の檻』は、2025年8月に刊行されている。舞台は閉ざされた北海道の山奥の病院。
山口未桜、もう次が読める。

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