『十角館の殺人』の魅力、記憶を消してもう一度読みたい作品No.1

実写化不可能と言われていた伝説の作品。

ミステリー小説を読み慣れていると、ある種の「読み方の癖」がついてくる。
怪しい人物に目星をつけて、アリバイの穴を探して、伏線らしき描写をメモして。そういう読み方をしてきた人間ほど、この本に足元をすくわれる。

そして、超気持ちいい。

最近ついに実写化もされて、それもなかなか上手くできていて感心した。

Sponsored
目次

『十角館の殺人』は面白いのか?ミステリー好きの超短い感想

結論から言うと、面白いというか「おみごと」と言うほかない作品。
「読む前と後で、ミステリーの読み方が変わった」という記憶として残っている。

『十角館の殺人』あらすじ ―孤島、十角形の館、消えていく人たち

舞台は瀬戸内海に浮かぶ孤島、角島(つのじま)。

大学の推理小説研究会に所属する学生たちが、その島に建てられた「十角館」を訪れるところから物語は始まる。十角館というのは文字通り十角形の形をした奇妙な建物で、かつてある悲劇があった場所でもある。メンバーたちはそれぞれ、エラリイ、カー、ヴァン、オルツィといったミステリーの巨匠たちのペンネームで呼び合っている。それ自体がすでに少し不穏で、少し奇妙。

島に渡った七人を、孤立した環境が静かに包んでいく。そして、殺人が起きる。

一方、物語は島だけで進むわけではない。本土側でも、ある人物が過去の事件を独自に調べ始める。この二つの視点が交互に描かれながら、読者は少しずつ、でも確実に何かへと近づいていく。

怖い。でも、目が離せない。誰もが怪しい、でも、怪しくない。

本格ミステリなので、きちんと読者に条件提示されていて、推理すればわかるようになっている。謎解き要素がしっかり入れ込んであって楽しい。謎解き好きな人、名探偵コナン好きな人にもおすすめしたい。コナンくんの謎解き要素が好きな人に限るが(この作品にラブコメ要素はない)。

『十角館の殺人』読んでいる最中の体感について

クローズドサークルもの、いわゆる孤立した場所で次々と人が消えていく構造は、アガサ・クリスティの時代から脈々と続いてきた形式だ。だから読み慣れた人ほど「どうせこのパターンだろう」という地図を持って読み始める。

私もそうだった。

ところが、この本はその地図をじわじわと書き換えていく。おかしいな、と思う瞬間が何度かある。何かが噛み合っていないような、微妙な違和感。でもそれが何なのかがわからないまま、ページをめくり続けてしまう。

そして、ある一行に辿り着く。

たった一行。本当にそれだけなのに、それまで読んできたものが全部、違う色に塗り替えられていく感覚があった。読み返したくて、でも読み返すのがくやしくて、しばらく本を閉じた。

新本格ミステリの出発点と言われる作品だけど、出発点というより「この一冊があったから、その後の国内ミステリがさらに活発になった」という印象、読んだ後にあらためて実感した。

Sponsored

『十角館の殺人』はこんな人におすすめ

– 最近「驚き」が薄れてきたと感じている人
– クローズドサークルもの全般が好きな人
– アガサ・クリスティやエラリー・クイーンが好きだが、日本の本格ミステリをまだ読んでいない人
– 伏線や叙述トリックに敏感で、「やられた」という体験を求めている人
– 一気読みが好きで、睡眠を削ってでも続きを読んでしまうタイプの人

『十角館の殺人』楽しみ方

できれば、本当は、何も知らない状態で読んでほしい。ネタバレはもちろん、「どこが凄いか」という情報も、なるべく入れずに。

個人的には紙をすすめたい。あの一行を目で追う瞬間、ページをめくる指が止まる感触ごと体験してほしいから。

ほかに『十角館の殺人』みたいな話が読みたいなら

『硝子の塔の殺人』/ 知念実希人
『十角館の殺人』の、あの伝統的な“館ミステリ”のワクワク感を令和の時代にもう一度味わいたい人には、知念実希人の『硝子の塔の殺人』がイチオシ。作中に漂うミステリ愛と、ちりばめられた驚愕の伏線に、全推理小説ファンが熱狂した傑作。

あわせて読みたい
『硝子の塔の殺人』:ネタバレなし、知念実希人が詰め込んだミステリ愛 頭の中に"あの塔"があった。透明で、冷たくて、美しくて心が燃える。 江戸川乱歩が生み出した探偵たちを思い出した。あの時代からずっとバトンは受け継がれてきたんだ、...

『屍人荘の殺人』/ 今村昌弘
『十角館の殺人』と同じく『大学のミステリ愛好会』の合宿から始まる、現代の超人気クローズドサークルが今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』。ただし、閉じ込められる理由は前代未聞。予測不能な展開と緻密なロジックをぜひ体験してほしい。

あわせて読みたい
【ネタバレなし】屍人荘の殺人 『屍人荘の殺人』今村昌弘による新本格ミステリーの話題作 『屍人荘の殺人』は、今村昌弘によるデビュー長編ミステリー小説であり、2017年に刊行された作品である。 第2...

あの一行のことは、きっとずっと忘れない

読書の記憶というのは不思議で、ストーリーの細部より「あの瞬間の感触」が残り続けることがある。

『十角館の殺人』については、その一行を読んだときの、あの静止した数秒間が、今でも鮮明だ。ミステリーを読んでいて本当に良かったと思った瞬間のひとつかもしれない。

\ 12万冊を耳で読む/

無料期間中の解約なら「0円」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次