道尾秀介『N』ネタバレなし紹介:読む順番で世界が変わる実験的小説

この本は「どこから読んでもいい」ようにできている。
それが作者が仕掛けた遊びであり、もう一つの「読者への挑戦状」とも言える。
近年人気のイマーシブコンテンツのごとく、「体験型小説」。
与えられるのではなく、読者が自分で選んだはずなのに、その世界へまんまと引きずり込まれていく。

本作は発表当初から書評サイトで高評価を獲得し、じわじわと読者を広げ続けるロングセラー。道尾作品の中では異色の「体験型」小説。
ページを開けば、もう引き返せない。

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目次

道尾秀介が仕掛けた、多重の罠

読み終えた瞬間、すぐに最初のページへ戻りたくなる。でも2度と同じ読み方はできないだろう。

あの会話の意味。あの描写の真意。すべてが別の顔を持っていたことに気づくからだ。道尾秀介は伏線を張るのではなく、伏線の中に物語を埋め込む。読者は最後まで、自分が何を読まされていたのか分からない。

ミスリードという言葉すら生ぬるい。これは読者の認識そのものを操作する小説。登場人物の誰かが犯人なのではない。読者自身が、最初から罠の中にいる。

道尾秀介『N』あらすじ

Nは、6つの短編が複雑につながり合う新感覚ミステリー。
収録された物語をどの順番から読んでも成立する特殊な構成。
ゆえにあらすじは…読者によって変わってしまう。

山で亡くなった少年、火事で家族を失った女性、孤独を抱える教師――
一見バラバラに見える登場人物たちの人生が、ある“事件”をきっかけに交差していく。
それぞれの物語では、登場人物たちが孤独や罪悪感を抱えながら生きていて、やがて、誰かの証言の食い違いや不可解な出来事が、思いもよらない“真実”へと結びついていく。

こんな人に刺さる

– ミステリに新しい驚きを求めている人
– 「犯人当て」より「物語の構造」に興奮するタイプの読者
– 一度読んだ本を、答えを知ってから読み直す楽しみを知っている人
– 登場人物の何気ない会話から違和感を嗅ぎ取るのが得意な人
– 誰かに話したくなる読書体験を求めている人

『N』はどの順番で読んでもいい——いつ、どこで開くか

紙で読む推奨。一気読み推奨。でも、通学・出勤の電車の中、病院の待ち時間とか、隙間読みでも楽しめるし、気分でどの章から読み始めても良い。

読み終えたら、すぐに誰かと話したくなる。でもネタバレはしない。この驚きは、自分で体験しなければ意味がない。

読んだあとに手に取りたい2冊

『シャドウ』(道尾秀介)
語り手そのものに惑わされる作品。『N』で道尾秀介の「読者を騙す技術」に感嘆したなら、次はこれだ。物語の視点が持つ恐ろしさを、これほど明確に示した小説は少ない。

『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
叙述トリックで高い評価を得ている一冊。『N』の構造的な仕掛けが気に入ったなら、この作品も裏切られる快感を味わえる。ただし、こちらは恋愛要素が強い。道尾作品とは異なる種類の驚きがある。

何度も読める小説、何度も騙される小説

二度目を読むと、一度目とは全く違う物語になる。

登場人物の表情が違って見える。会話の意味が反転する。あれほど親切に思えた説明が、実は読者を誘導するための罠だったと気づく。道尾秀介は、読者が「分かったつもり」になる瞬間を正確に計算している。

答えを知っても、まだ別な答えがある気がしてならない。

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